弘前天満宮/最勝院と同様に卯年の一代様
弘前に点在する十二支一代様の神社・寺院。
卯年は何故か二つ存在する。筆者は卯年生まれ。以前は卯年の最勝院に行ったが、弘前には卯年の一代様がもう一つ存在する。それが此処である。どんな兎さんが居るのかな?
基本情報
神社名 : 弘前天満宮
読み方 : ひろさきてんまんぐう
住所 : 青森県弘前市西茂森1丁目1-25
社格 : 旧村社
御朱印 : あり(現在は書置き)
建立年 : 慶長3年(1598)
創立者 : 大行院永尊
その他 : 卯年一代様
歴史
開祖は菅家(菅原氏)の末裔である珍重丸の十二代後胤にあたる大行院永尊という人物。
京都山宝院に、その後は越後の東光院に居たのを慶長3年(1598)に、津軽為信の招きに応じ、南郡大根子村に祈願所を設け仮堂とした。
長永寺松峰山大行院と称し、津軽の山伏を支配する司頭であった。
慶長4年(1599)2月に、中郡八幡村へ移住し寺禄三十石を与えられ、寛永2年新寺町へ移住する。一輪山報恩時造営に付き、宝暦4年(1755)に、現在地である西茂森へ。明治4年に修験道廃止により、【神道天満宮】となる。
御祭神と御本尊の文殊菩薩は、代々大行院の代神として祀っていた。
ご神木と、種里にあった大浦家の先祖が祀っていた舘神は、慶長15年に信牧公の時代に弘前城に遷して、天神様と称する。
五の後は信政公の命令により、植田村橋雲寺に移す。
明治4年にふたたびこの地に遷座され祀られる。
摂社・末社である【稲荷神社】は、平成15年の津軽ダム建設のため、西目屋村砂子瀬・西目屋村川原平にそれぞれ鎮座されていたが、遷座されこの地へ。
境内の天然記念物
【天満宮のシダレザクラ】
・ 県指定天然記念物
・ 修験道の寺だった大行院(天満宮の前身)があった場所
・ 江戸時代から保護されていた
・ 大正期に『全国大桜番付』にも記載
・ 一般市民にも広く親しまれている
・ 推定樹齢は500年以上。全国的にも貴重な古木
御祭日
4月25日 : 春の祈願祭
6月25日 : 夏季例大祭
10月25日 : 秋の感謝祭
御祭神
【弘前天満宮】
・ 菅原道真朝臣命
・ 文殊菩薩
【稲荷神社・若木神社】
・ 倉稲魂命
・ 小彦名神
・ 若木神
御祭神の神格と御利益
【菅原道真朝臣命】
・ 菅原道真公
・ 別称【天満天神】【天魔大自在天神】
・ 学問・受験合格の神様として親しまれている
・ 菅原家は代々学者の家系。学者や文人だけでなく、政治家として卓越した能力を発揮したのが菅原道真
・ 醍醐天皇の時代に55歳で右大臣に上り詰めた
・ スピード出世に時の権力者の反発を買い、北九州の太宰府へ左遷
・ その2年後に無念の思いを残し亡くなる
・ 百人一首の『東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春を忘るな』が有名
・ 大宰府で亡くなったことから都では天変地異が続く
・ 宮殿に雷が落ちる・道真を陥れた人物が病死するなど
・ 道真の怒りを鎮めるために北野天満宮を建立したほど
・ 上記のことから元々は怨霊
・ 怨霊の力と生前の優秀な文化人としての道真が結び付けられ神格化
・ 学問・文筆の神として天神信仰が広く浸透。これが後に江戸時代になると寺子屋の始まりとされる
《神格》
・ 学問の神
・ 受験の神
《御利益》
受験合格、詩歌、文筆、芸能、学問上達、農業守護、病気平癒、子宝・安産
【文殊菩薩】
・ もんじゅぼさつ
・ 参拝することで『正しい判断力が備わる』と言われる
・ 試験・受験の合格祈願、学業成就を願う験担ぎとして人気がある
・ 文殊菩薩は智慧を司るため、知識・知恵の象徴とされる
・ 『三人寄れば文殊の知恵』の由来
・ よく四肢に乗った姿で描かれる
・ 因みに聖徳太子は文殊菩薩の生まれ変わりと信じられている
・ 普賢菩薩と共に釈迦如来の脇侍
【倉稲魂命】
・ うかのみたまのみこと
・ 『古事記』では宇迦之御魂神
・ 倉稲魂命は『日本書紀』の記述
・ 別称で一番有名なもので『お稲荷さん』
・ 八百万の神の中で代表的な食物神
・ 古来より女神信仰
・ 『宇迦』は食物の古形で【稲霊】を表現。『御』は神秘・神聖。『魂』は霊とする
・ 宇迦之御魂神は【稲に宿る神秘な霊】と考えられる
・ 稲荷信仰と習合し全国に広まる
《神格》
穀物神、農耕神、百貨店の神、タバコ屋の神、麻雀の神、諸産業の神
《御利益》
金運向上、産業振興、商売繁盛、家内安全、芸能上達、五穀豊穣、諸願成就、交通安全
【小彦名神】
・ すくなひこな
・ 一寸法師のルーツ
・ 海のかなたにある常世の国から、光り輝きながらわたってきた小人神
・ 豊かな知識や技術を備え、腕力ではなく知識力で困難を克服していく姿に人気がある
《神格》
穀物神、医療神、酒造の神、温泉の神、常世の神
《御利益》
国土安寧、産業開発、漁業、航海守護、病難排除、縁結び、安産、育児守護
境内の様子
【一の鳥居】
笠木 : 水平
島木 : なし
木鼻 : なし
楔 : なし
額束 : あり
・ 多分神明系鳥居
・ 笠木に反り増しが無く、島木がない。神明系鳥居の特徴だが、額束があるのは【宗忠鳥居】だが…
【二の鳥居】
笠木 : 反り増しあり
島木 : あり・反り増しあり
木鼻 : あり
楔 : あり
額束 : あり
その他 : 柱の前後に稚児柱がある
・ よく出てくる明神系鳥居からの発展形である【両部鳥居】
・ 一番の特徴が前後の柱
・ 神仏習合の名残
【三の鳥居】
笠木 : あり
島木 : あり・反り増しあり
木鼻 : あり
楔 : あり
額束 : あり
その他 : 島木の下と柱の上部の接合部分に台輪がある
・ 二の鳥居を入ってすぐ右側にある鳥居
・ 柱の上部の台輪が特徴。明神系鳥居からの発展形である【台輪鳥居】
・ 二の鳥居とは違い、こちらは古くからあり、直されていないように見える
【御社殿前の鳥居】
笠木 : あり
島木 : あり・反り増しあり
木鼻 : あり
楔 : あり
額束 : あり
その他 : 島木の下と柱の上部の接合部分に台輪がある
・ 三の鳥居同様の造り
・ 台輪鳥居
・ 色褪せ方から、同年代の物だろうか?
・ 額束箇所に御幣が掲げられていることから、神前という証拠
【参道】
・ 一の鳥居をくぐって、殆ど一直線で御社殿に繋がっている
・ 一の鳥居と二の鳥居の間に駐車場がある
・ 御社殿までの間に石碑などが立ち並んでいる
・ よく整備されている
【手水舎】
・ 質素な造り
・ 龍神様
・ 冬場は寒そう
【一代様】
・ 卯年の一代様
・ 最勝院とは違った味のある兎
・ 狛兎のように見える
・ 兎は吉兆をもたらす聖獣だとか
【狛犬】
髪・眉 : 大きくはっきりとした前髪カール。これにより眉は見えない
口・歯 : 普通は唖形に牙や歯が見えるのだが、吽形に牙が生えているのが見える。唖形は牙ではなく、パヤパヤした歯が見えるだけ
髯 : 顎髭がカールしている。口周りにも髭らしきものが見える
耳 : 伏せ耳で髪で隠れているように見える
目・鼻 : 大きな楕円形の眼で瞳箇所は穴が開いている。鼻は縦に長いシュッとした獅子鼻。他の神社に比べて鼻が高い
毛・尾 : カールした毛が体に張り付いている。立ち尾で炎を思わせるように流れている
手足 : がっしりとした手足。力強い雰囲気
姿勢 : 大地を踏みしめるように背中を延したお座り
・ とぼけたように『スン』としたような雰囲気を持ち、どこか抜けているような表情が面白い
・ 吽形は間抜けな表情だが、唖形はまた違った表情をしている
・ 笑っているように見える。ガハハハと、笑う豪快なタイプ
・ 吽形の顔を見て笑っているような雰囲気
・ 二対供味のある雰囲気を出している
【石碑】
・ 狛兎から参道の左右に様々な石碑がある
・ 字がつぶれて読めなかったが、松尾芭蕉翁の歌碑
・ 『島口重次郎先生顕彰碑』なるものも
・ 菅公千年祭記念碑
・ 歌碑や記念碑が並んでいる
【御社殿・本殿】
階層 : 平屋建て
材質 : 木造
建築様式 : 妻入り
屋根の特徴: 切妻、本殿は流造
屋根の材質: 銅版葺?
・ 御社殿・本殿は境内の奥に鎮座。落ち着いた雰囲気を出している
・ 木漏れ日からの光・風共に心地よく、静かな場所だった
・ 7年前との違いは、拝殿幕が白→紫に
・ 御社殿・本殿共に小さいながらも、堂々とした力強さを醸し出している
・ 関係ないが、筆者が卯年ということもあり、変な親近感を以って、落ち着いて参拝できた場所
・ 煌びやかさは無く、拝殿内部も豪華な感じはしない。落ち着いた安心できるような場所のように感じられた
【摂社・末社】
・ 鳥居と社殿共に朱い【稲荷神社】
・ 境内の一角にある【天満宮の枝垂れ桜】の社殿
・ 新緑でこれだけの存在感あらば、桜が満開だとどんな雰囲気になるのだろうか?
・ 弘前城以外にも見るべき桜が多いなぁ、と感じる
御朱印について
あり
現在は書置きのみでの対応
以前の御朱印
現在の御朱印
まとめ・感想
長勝寺の黒門近くの細い脇道に入っていくと当神社が鎮座されている。住宅街の一角に溶け込むように鎮座されているのが印象深い。
一方通行の細道のため、天満宮を視認しても通り過ぎたら、またぐるりと周る必要がある。
境内に駐車場はあるが、境内に車を入れるスペースは狭く、一方通行のため頭から突っ込むことは困難。切り返しをしてバックで入れる必要があるのが難点ではあるが、その難所を通り抜けると、卯年の一代様がお出迎えしてくださる。
神社自体は400年近くの歴史を持つが、それよりも100年も前から弘前の街並みを見守り続けたのが枝垂桜。新緑の季節でもその存在感は大きく、きっと春になると弘前公園にも負けないような桜を咲かせるのだろう。
もう一つの一代様がある最勝院も近くにあるので、弘前散策時にはそちらへの見学や参拝もお勧め。最勝院の大きく立派な卯も良いが、こちらの素朴な感じの卯も可愛らしい。
そして卯よりも目立つ…何だったら御社殿よりも存在感がある狛犬も見物の一つだろう。神聖な場所にいるとは思えないような、俗世感があふれ出る表情の癖が強い狛犬に出会えるのだから。
長勝寺の黒門近くの細い脇道に入っていくと当神社が鎮座されている。住宅街の一角に溶け込むように鎮座されているのが印象深い。
一方通行の細道のため、天満宮を視認しても通り過ぎたら、またぐるりと周る必要がある。
境内に駐車場はあるが、境内に車を入れるスペースは狭く、一方通行のため頭から突っ込むことは困難。切り返しをしてバックで入れる必要があるのが難点ではあるが、その難所を通り抜けると、卯年の一代様がお出迎えしてくださる。
神社自体は400年近くの歴史を持つが、それよりも100年も前から弘前の街並みを見守り続けたのが枝垂桜。新緑の季節でもその存在感は大きく、きっと春になると弘前公園にも負けないような桜を咲かせるのだろう。
もう一つの一代様がある最勝院も近くにあるので、弘前散策時にはそちらへの見学や参拝もお勧め。最勝院の大きく立派な卯も良いが、こちらの素朴な感じの卯も可愛らしい。
そして卯よりも目立つ…何だったら御社殿よりも存在感がある狛犬も見物の一つだろう。神聖な場所にいるとは思えないような、俗世感があふれ出る表情の癖が強い狛犬に出会えるのだから。