蘭庭院/数少ない栄螺堂が有名
弘前市の禅林街に存在する蘭庭院。そこが有する国内でも数少ない栄螺堂。冬季期間は中を見ることは叶わないとのこと。今一度事前に調べる大切さを知りつつ、蘭庭院さんを参詣することに。
基本情報
寺院名 : 蘭庭院
宗派 : 曹洞宗
山号 ; 金平山
正式名称 : 金平山蘭庭院
住所 : 青森県弘前市西茂森2丁目9-1
御朱印 : あり
駐車場 : 長勝寺近くにあり
開山 : 心蓮寿用
開山年 : 元和4年(1618)
開山理由 : 津軽藩初代藩主為信の妹である蘭庭薫公大姉が死去し菩提を弔うため
御本尊 : 釈迦如来
その他 : 栄螺堂を管理している
禅林三十三ヶ寺第9番
歴史
津軽為信のである重臣兼平平中書綱則が亡妻の菩提を弔うため、自分の領地である兼平(現在の弘前市大字兼平)に建立したのが始まり。
古地図には兼平天満宮の北寄りの山腹に寺院が記されている。天満宮の境内に永仁年間(1293)と刻まれた石碑があることから、兼平には以前から寺院があったとみられる。
永仁年間は蒙古襲来の弘安の役から十数年後の鎌倉期だった。石碑は墓石の様に思われることから、寺院があったことも理解できるだろう。
寺院名の由来は、兼平綱則の亡妻にして、津軽為信の姉の名前を【蘭庭薫公大姉】という。そこから寺院の名前を付けられたと言われる。
慶長16年(1611)に、弘前城が完成すると弘前城の裏鬼門(南西方向)に当たる地に、禅林街が町割りされ、蘭庭院も現在地に移動された。
《栄螺堂》
・ 別称として六角堂
・ 天保10年(1839)に御堂が建てられる
・ 津軽藩の豪商・中田嘉兵衛が建立
・ 商戦の航業・作業中に出た遭難者。天明・天保の大飢饉での惨状を憂い、その供養のために建立したという
・ 昭和54年(1979)に弘前市指定有形文化財に指定されている
螺旋状に上る堂内が阿弥陀如来の胎内を意味する栄螺堂。
途中で八大尊を拝しながら中を登る。階段を降りると入口の観音様の前で明るい光に出会うことで罪が消え、新しく生まれ変われるという信仰体験ができる建物。
外壁の数から六角堂・八角堂と呼ばれる。
同様の御堂を持つもので有名なものは、福島県にある【飯森山さざえ堂】、群馬県にある【曹源寺さざえ堂】、茨城県にある【長禅寺三世堂】などが数少ない現存する建物。
中を見学するときは、蘭庭院に鍵をお借りできる。しかし冬季期間(12月~3月)は施錠。
《兼平綱則》
森岡信元・小笠原信浄と共に大浦(後の津軽家)参篭の一人。
浪岡城攻防戦・大光寺城攻防戦など津軽家の腫瘍合戦に参戦。
自身だけでなく、子供・孫も津軽家の家老として津軽藩の発展に尽力している。
八大尊とは?
不動明王、釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩、地蔵菩薩、弥勒菩薩、薬師如来、観世音菩薩
八大尊について
【不動明王】
読み方 : ふどうみょうおう
密教 : 本尊。大日如来の化身
起源 : インド神話のシヴァ神
梵名 : アチャラナータ
真言 : ノウマク・サンマンダ・バザラダン・センダン・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン
特徴 : 火炎を背に、鬼のような怒りの表情を浮かべ、剣を持っている
御利益 : 除災招福、病気平癒、疫病退散、身体健全、家内安全、国家安泰
・ 酉年の守り本尊
・ 古来より『敵国退散の守護神』『英病態さんの守護神』として崇められてきた
・ 右手に持つ倶利伽羅剣は象徴
・ 左手には悪を縛り上げ、煩悩から抜け出せない衆生を吊り上げて救済する羂索(けんさく)という投げ縄を持っている
・ どちらも『魔を退散させ、人々の煩悩や因縁を断ち切る』
・ 心の迷いや万能を断ち、全ての人を掬いへと導く密教の仏様
【釈迦如来】
読み方 : しゃかにょらい
仏教 : 開祖
起源 : 古代インドの小国、社家族の王子
本名 : ゴーダマ・シッダールタ
真言 : ナウマク・サマンダ・ボダナン・バク
特徴 : 装身具類をつけず、薄い頃も一枚をまとい、螺髪という渦巻いた特徴的な髪形をしている
御利益 : 悟りを開くための御利益
・ 人々をあらゆる苦悩から救い、人生の安らぎの道に導いてくれる仏様
・ 全ての如来像の基本となる
・ 相手の恐怖を取り除き、相手の願いを聞き届ける姿勢を表現している
【文殊菩薩】
読み方 : もんじゅぼさつ
正式名称: 文殊師利菩薩(もんじゅしりぼさつ)
起源 : 古代インドのコーサラ国の首都・舎衛国のバラモン階級の者
存在 : 智慧を司る
梵名 : マンジュシュリー
真言 : オン・アラハシャ・ノウ
特徴 : 多面多臂ではない。右手に剣・左手にお経の巻物。若々しい。獅子に乗っている。髪を複数のお団子の様に結っている
御利益 : 合格祈願、学業向上など
・ 三人寄れば文殊の知恵
・ 卯年の守り本尊
・ 知恵の神様
【普賢菩薩】
読み方 : ふげんぼさつ
起源 : あまねく賢い者
梵名 : サマンタバドラ
真言 : オン・サンマヤ・サトバン
特徴 : 一身四頭の白象に騎乗され、二臂もしくは二十臂の手には印や仏具などを持っている
御利益 : 幸せを増大させる増益
・ 大乗仏教における崇拝の対象である菩薩の一尊
・ あらゆるところに現れ命ある者を救う菩薩
・ 女性でも悟りを拓けるという『女人成仏』を説く法華経に登場するため、女性からの信仰が篤い
・ 辰年・巳年の守り本尊
【地蔵菩薩】
読み方 : じぞうぼさつ
起源 : 釈迦が入滅後、弥勒菩薩が世に現れるまでの無仏の間、六道の衆生を教え導くことを誓いとした菩薩
梵名 : クシティガルバ
真言 : おん かかか びさんまえい そわか
特徴 : 全ての人に救いの手を差し伸べ、あらゆる苦難から救ってくれると信じられており、多くの人に信仰されるようになった
御利益 : 無病息災、五穀豊穣、交通安全、水子祈願、安産、子授け、子供守護、先祖菩提、戦勝祈願
・ 無仏時代の守護神
・ 古代大地の神として崇められ、後の仏教の守護神となった
・ 日本においては平安時代に庶民の間で大流行になり、あらゆる場所で祀られるようになった
【弥勒菩薩】
読み方 : みろくぼさつ
起源 : 釈迦牟尼仏の次に現れる未来仏
梵名 : マイトレーヤ
真言 : オン・マイタレイヤ・ソワカ
特徴 : 減罪の御利益が大きく、釈迦が救えなかった全ての人を救うといわれている。目をつむり柔らかな微笑みを浮かべている
御利益 :釈迦の後継者ということにより、未来を救済する
・ 大乗仏教では菩薩の一尊
・ 釈迦を継ぐもの
・ 慈悲から生まれた者
【薬師如来】
読み方 : やくしにょらい
起源 : 東方浄瑠璃世界の教主
梵名 : バイシャジヤグル
真言 : オン コロコロ センダリマトウギソワカ
特徴 : 現世に願いをかなえてくれるとされる。左手に薬壺を持っている
御利益 : 子授け、安産、病気平癒、【がん封じのお薬師さま】
・ 仏教が日本に伝来した初期のころから信仰された仏様
・ 病気や傷を癒してくれる
・ 生きているうちに手を差し伸べてくれる
【観世音菩薩】
読み方 : かんぜおんぼさつ
起源 : 大乗仏教の菩薩思想の流れの中に培養されたモノ
梵名 : アヴァローキテーシュヴァラ
真言 : おん あろりきゃ そわか
特徴 :
御利益 : 災難に遭わない、寿命を延ばす、病気平癒、夫婦円満、恋愛成就
・ ジェンダーフリーの体現者と解釈されていた
・ 世の人々の音声を観じて、その苦悩から救済する菩薩
・ 般若心経における観自在菩薩
境内について
【山門】
・ 小さいながらも立派な四脚門
・ 禅林街の寺院殆どに当たるが、門の前に山号のついた石碑がある
・ 山門の前には神橋もついている
・ 他の山門は華美な装飾や彫刻が施されているものもあるが、当院はシンプル・イズ・ザ・ベストという感じな造り
・ シンプルながらも重厚そうな見た目
【ペットのお墓】
・ 入ってすぐにペットのお墓
・ 『津軽九番』の刻みの入った石碑と馬頭観音様かな?
・ 畜生道救済の御利益もあるし、馬頭観音様が一番かと思われる
・ 筆者がお世話になっているお寺のペットのお墓も早くできてほしい
【水子供養】
・ 戸は締められていたが水子供養の建物もあった
・ 雪もなく、例年よりも寒くはないが、冷たい風が入らないようになっているのかな?
・ 建物は新しくないが、建物前も中も綺麗にされている
・ 建物の隣に地蔵菩薩が守っている
・ 真面目そうだが、優しそうな表情をしている
【御本堂】
入り : 平入
屋根の形式: 寄棟かな?
屋根の材料: 銅板葺
屋根の特徴: 唐破風、向唐破風
懸魚 : 拝懸魚、雲のような意匠が施されている
木鼻 : 雲の意匠
・ 訪問時はまだ少し境内に雪があった
・ 時期は3月だったが、例年よりも暖かく雪も少なくとても良い日だったと思う
・ 雪国らしく二重の入り口
・ 彼岸近くだったため、禅林街全体で賑わっていたが、丁度足が止まった瞬間を撮れて良かった
・ 境内は綺麗に整備されていた
・ 本堂は外から見ると小さく見えたが…
【本堂内部】
・ 広く拓けた伽藍の世界が広がっていた
・ 外観同様に素晴らしく煌びやかな装飾が施されているわけではない
・ 静かで厳かな雰囲気と、質素ながらも重厚感のある空間だった
・ 囲いのようなものもなく、開けたお寺、といった雰囲気もあった
御朱印について
あり。
2種類ある。
・ 蘭庭院さんの御本尊である【釈迦如来】が記されたモノ
・ 蘭庭院さんが管理されている【栄螺堂】の名前が記されたモノ
まとめ・感想
禅林街の一角にある寺院。
長勝寺の近くに車を置き、ぐるりと巡るように参拝を繰り返し、こちらの寺院へ足を運ぶ。
丁度彼岸の近くだったこともあり、何時もは禅林街全体が静かな雰囲気に包まれているのだが、この日は多くの参拝者が居たが、たまたま筆者が参拝時には人が居なくゆっくりと見学することができた。端から端までに三十三もの寺院が立ち並ぶ光景はなかなか見られないだろう。
一つ一つの境内はそれほど広くないが、それぞれの寺院によっては入ってすぐに鐘楼があったり、不動明王や神社などが合祀されたりしている。
蘭庭院さんは表を広くとっており、ゆったりとした空間が広がっていた。色々な場所に目移りすることはあまりなく参拝できた。
山門や御本堂もシンプルで、雰囲気的に重厚な感じを出してい入るが、重苦しさもなく気軽に参拝できた。
中でもゆっくりと出来、宗派は違うがしっかりと拝むこともできた。