近くには城跡もあるよ!/乳井神社
行きたい行きたいと思って中々足がのびなかった神社。訪問してみると近くに城跡もあり、眺めもいいとか。参拝と合わせてこちらも…(眺め良かったけど疲れた)
基本情報
神社名 : 乳井神社
読み方 : にゅういじんじゃ
住所 : 青森県弘前市大字乳井字外の沢67-3
旧社格 : 郷社
御朱印 : あり
建立年 : 永暦2年(1078)(嘉永山福王寺として)
創立理由 : 坂上田村麻呂が悪鬼征伐の際に毘沙門天を祀ったという伝説から
その他 : 現在まで妙見信仰が残る
歴史
平安時代永暦2年に東寺の分客として【嘉永山福王寺】と名付け、当社に伽藍造立をもって創建された。
以来『心願成就の守り神』『武運長久』『息災延命』『五穀豊穣の守護』の神として時代の国主・藩主・武家及びに町家商人農村の民衆に至るまで毘沙門天のご神託に敬神の念篤く、人々の信仰生活に深くかかわり、心の拠り所として広く信仰され続けている。
歴代の津軽藩主にも崇拝されていた。
三代目藩主津軽信義公は、康永2年に天災により焼失した社殿を復元を企てる。明暦元年に再興。この再興された社殿は現在の御拝殿。
明治4年の神仏分離令により毘沙門宮から【乳井神社】へと改称。
廃藩置県に至るまで津軽藩の直願とロコとして尊崇された。
現在まで続く北斗七星参りの【妙見信仰】が生きる当社は、最期の参拝所として多くの崇敬者が願掛け参りをされている。
御祭日
・ 1月1日 : 歳旦祭
・ 1月5日 : 五ヶ日祭
・ 4月3日 : 祈年祭
・ 8月2日 : 宵宮祭
・ 8月3日 : 例祭
・ 11月 : 新嘗祭
文化財について
・ 五輪塔及び板碑群 : 平成8年12月3日指定
・ 乳井神社社殿 : 平成10年11月27日指定
津軽北斗七星
・ 青森市の市章は『北斗七星を図案化』したもの
・ 青森を象徴するために青の字を模擬したもの
・ 円は青の字の月を意味する
・ 星の七つの突角は、青の字の月を除いた部分で北斗七星になぞらえる
・ 本州最北端であることを意味し図案化したもの
・ 青森市内にある【大星神社】に由来する
・ 元々は弘前藩の由緒ある祈願所
・ 妙見宮・北斗寺とも言われる
・ 下記の神社を結ぶと【北斗七星】が描かれるとのこと
《北斗伝承の神社》
1. 大星神社(青森市)
2. 浪岡八幡宮(青森市)
3. 猿賀神社(平川市)
4. 熊野奥照神社(弘前市)
5. 岩木山神社(弘前市)
6. 鹿島神社(西目屋村)
7. 乳井神社(弘前市)
《坂上田村麻呂の伝説》
・ 桓武天皇の治世のころ
・ 天災等々が続き、中国の風水に従い、鬼門封じを行う都として【平安京】を作ることに
・ 当時の津軽地方は【鬼門の地】
・ 鬼門封じのため、坂上田村麻呂を征夷代将軍に任命し東北地方へ
・ 【征夷=蝦夷征伐】からきている
・ 当時東北地方には蝦夷が跋扈していた。田村麻呂は東北地方へ赴き多賀城を建立
・ 蝦夷征伐時に蝦夷首領・アテルイと戦う
・ 戦いは激化し、アテルイ側から和睦が出る。田村麻呂もアテルイの助命を帝へと願い出るが、帝からの許しは出ず、アテルイとその従者は処刑される
・ その後田村麻呂は平定した津軽に七つの社を建てそこに武器を奉納する
・ 七つの地に田村麻呂将軍が常駐するように見せ、星の威光を仮て鬼神を封じるために、七つの社を北斗七星の形に配置した
・ 弘前市にある多賀神社は【坂上田村麻呂・アテルイ・従者モレ】を弔うために建立されたという伝説も残る
御祭神
・ 武甕槌之命
・ 経津主之命
・ 天手力男之命
御祭神の神格と御利益
【武甕槌之命】
・ たけみかづちのみこと
・ 古事記では『建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)』
・ 日本書記では『武甕雷男神(たけみかづちおのかみ)』
・ 上記の『男』からわかるように男神
・ 出雲国を平定した武神
・ 出雲国を平定するのに困った天照大神が、智慧の神【思金神】に相談したところ、【建御雷之男神】の派遣が決まる
・ 出雲国平定後、建御雷之男神は常陸・下総付近へ。当時この地方は地震が頻発。自身の原因は【大鯰】によるもの
・ 地中に潜む鯰を抑え込むために、石棒を差し込み鯰を捕まえ地震を鎮める
・ この石棒を【要石】と呼び、鹿島神宮の要医師は大鯰の頭、香取神宮の要石は尾を抑えているとのこと
・ 要石は某弾幕ゲームに出てくるアレ。長らく漬物石だと思ってたやつ…
《神格》
雷神、剣神、武神、軍神、地震の神、境界神
《御利益》
武道守護、武道上達、国家鎮護、航海平安、安産守護、病気治癒、厄除開運、延命長寿、縁結び、交通安全、農業守護
【経津主之命】
・ ふつぬしのみこと
・ 日本書記の『経津主神』が一般的
・ 別称に『香取さま』『香取大明神』がある
・ 『破邪の剣』の神格を持つ。某RPGとは関係ない…はず
・ 国譲りの国土平定神話に登場する神様
・ 神武東征において武甕槌之命が神武天皇を助けるために降した神剣【布都御魂(フツノミタマ)】を神格化したという伝承がある
・ 他にも物部氏の祖神である【天目一箇神】の別名という説
・ 布都御魂は古代儀式に用いられる剣の祭具。宮廷祭祀の鎮魂儀礼に使われる
・ 先述の武甕槌之命と共に芦原中国を平定した神
・ 千葉県に本拠地がある香取神宮の御祭神
・ 常総地方の有力な神
《神格》
剣神、武神、軍神
《御利益》
武芸上達、スポーツ上達、開運招福、諸災厄除け、地震除け、延命長寿、交通安全、夫婦和合、出世、憑物払い、安産、農耕・海上守護、殖産興業
【天手力男之命】
・ あめのたぢからおのみこと
・ 『天上界でもっとも手の力が強い男』という名前を持つ神
・ 日本で最初のひきこもりとして有名な、天岩戸に籠った天照大神が扉を開けたところ、その手を引いて岩戸から出した神様
・ ある意味この世に太陽の光を復活させた有難い神様
・ 日本各地の神楽に登場する、昔から人気がある神様
・ 怪力のイメージが強い神様だが、一般的にスポーツ守護神としての信仰を集める
・ パワー
・ 天岩戸の神話を表現した神楽として有名なのが、宮崎県高千穂町の夜神楽『戸取舞』がある
・ 立山や戸隠の山岳信仰にも関係している神
・ ヒッキーとなった天照を出す際に、天岩戸の扉を開けたが、その扉を放り投げる。その扉が地上に落下して戸隠山になったという
《神格》
力の神、技芸の神
《御利益》
技芸上達、五穀豊穣、スポーツ上達、開運招福、災難・厄除け
乳井茶臼館
・ にゅういちゃうすだて
・ 津軽平野南端に位置する
・ 嘗ては交通の要所を抑える位置に立地していた
・ 二つの曲輪が配置
・ 天正7年(1579)に秋田の比山勢が津軽に侵攻した際に、当地を占領・立てこもった場所
・ 大浦勢(津軽氏)と比山勢は六羽川で激しくぶつかる。一時期大浦為信は窮地に追い込まれたとか
・ 当地周辺の調査により、乳井氏の居城と伝わる乳井古館や乳井城、乳井神社・五輪塔・板碑などの文化財も多数所在
・ 乳井チキの歴史を伝える重要な遺跡
・ 丘上を登ると綺麗な見た目
・ 結構な坂道だが、登って良かった
境内の様子
【一の鳥居】
笠木 : 反り増しあり
島木 : あり・反り増しあり
木鼻 : あり
楔 : あり
額束 : あり
その他 : 柱の前後に稚児柱がある
・ 石造り
・ 住宅街の一角にポツンと建っている
・ 明神系鳥居の【両部鳥居】
・ よく見る鳥居
・ 二の鳥居までの参道は普通に住宅街
【清水】
・ 桂清水とのこと
・ 有名らしい
・ 雪国らしく『冬季期間中は水を止めます』と書かれている
【二の鳥居】
笠木 : 反り増しあり
島木 : あり・反り増しあり
木鼻 : あり
楔 : あり
額束 : あり
その他 : 柱の前後に稚児柱がある
・ 一の鳥居同様に両部鳥居
・ こちらは木造
・ 朱色
・ 結構垂れ下がった注連縄
【二の鳥居くぐってすぐの狛犬】
髪・眉 : 前髪カールしており眉は見えず。波しぶきの様に毛先がカールした髪。胸元まで伸びる長めの髪
口・歯 : 牙と四角い歯が確認できる。前歯のみで奥歯は確認できず。口腔内は朱色で舌も同じく朱色
髯 : 鼻の下に上向きにカールした髯有り
耳 : 伏せ耳。ぺたーんと伏せている
目・鼻 : 楕円形の目で、瞳は黒。顔全体的に小さい目。鼻はそこまで主張が強くないが獅子鼻。潰れており、鼻は高くない
毛・尾 : 尾はお尻の上に乗っかる形だが立ち尾。毛並みは髪同様に流れるような雰囲気でカールしている
手足 : 体の割にがっちりと大きい。爪も立派
姿勢 : お尻を上に突き出すような姿勢
・ 唖形型の狛犬、参拝者を威嚇するかのように吠えている様にも見える
・ 吽形型は警戒心強めの様な雰囲気
・ 出雲式の様に、お尻を上へと突き出すような姿勢をとっている
・ 黒石神明宮などで目にした狛犬に姿勢が似ている
・ こちらの狛犬は狛犬らしい見た目なんだが………御社殿前の狛犬に何があったん?
【手水舎】
・ 某感染症も落ち着き水が張っている
・ 冷たく気持ちよかった
・ 綺麗に形成した形状ではなく、石を削ったような自然風な手水桶
・ 四脚の建物
・ 水桶隣にも石垣のような積み方がされている桶がある
【石燈籠】
・ 燈籠が乗る台は龍神様
・ 平べったいが何と言われようが龍神様
・ 口腔内に穴が…水でも流れ出るのかな?
・ もう一方は………倒壊しておりました
・ 台座の龍神様も寂しそう
・ 重量のある燈籠が崩れても危険だからしょうがないね
【龍神宮】
・ 二の鳥居をくぐり、倒壊した燈籠横に朱色の神橋と池がある
・ 橋の向こう側には龍神宮
・ 池の周りには布袋様や恵比寿様の石像
・ 龍神宮へと続く鳥居は明神系鳥居の発展形の【台輪鳥居】
・ 橋は…良い感じにギシギシいっていた。なんかワクワクする音
【ウマ】
・ 御社殿へと続く参道を歩いていくと両脇にウマが奉納されている
・ 両脇に狛犬の様に佇んでいる
・ 立ち止まった馬と、歩き出そうとしている馬
・ 体が大きく手足が細い
【三の鳥居?】
・ 両部鳥居だと思われる
・ 御社殿へ続く手前に本来はあったのだろう
・ 稚児柱だけが寂しく建っていた
・ 綺麗に何もない
【御社殿前の狛犬】
髪・眉 : 前髪カールして眉は隠れている。毛先がカールした髪。髪の長さは短め
口・歯 : 口腔内に舌。上に二本の牙。歯は四角い
髯 : 天使の羽の様な髭
耳 : 伏せ耳。ヒコーキ耳
目・鼻 : 顔の大きさのわりにつぶらかな瞳。大きい獅子鼻。平べったい鼻
毛・尾 : 立ち尾。毛並みは体に張り付いているが、そこまで毛深い見た目ではない
手足 : ムチムチの手足。筋肉質ではなく、ぽっちゃりめ?
姿勢 : お座りの姿勢。参拝者の方向を見るのではなく、斜め上を見ている
・ 狛犬?
・ なんだか今まで見てきた狛犬史上、一番ぽっちゃりとした狛犬
・ デフォルメされたマスコット的な可愛さ
・ なんだかやる気満々なのか、何かを期待しているような表情。とりあえず撫でておいたが…
・ 唖形型は…凄く良い笑顔
・ 顎髭も天使の羽のように見える
・ 髪型的に多賀神社の禿型の狛犬にも見えるが、多分別物の狛犬?
・ たくきよしむつ氏の『新・狛犬学』によると、こちらの狛犬は明治17年(1884)に、石工の斉藤安太郎氏により制作された物とのこと
・ 青森県内でも津軽地方は独自性が強い狛犬が多い気がする
【御社殿】
階層 : 平屋
材質 : 木造
建築様式 : 入母屋造
屋根の特徴: 平入
屋根の材質: 鉄板葺
・ 宮彫りなどの過度な装飾や彫刻は見られず
・ 乳井茶臼舘の上からでもよく目立つ緑色の屋根
・ 鉄が緑に変色しているのだろうか?
・ 木造の雪囲い?
・ 冬場は白と緑が綺麗なのだろう…行かないけど
・ 天井も高く開けているような見た目
・ 軒が伸びており、降雪時も参拝は安心?行かないけど
【戸隠神社】
・ こちらの狛犬はシュッとした見た目
・ 御社殿前の狛犬はぽっちゃりで、こちらはやせすぎている
・ こっちの方が狛犬らしいのだが…
・ 鳥居は台輪鳥居
・ 狛犬はラブラドールの様な伏せ耳
・ 体の割に手足はがっちりと太め
【その他の摂社・末社・石碑】
・ 先述の戸隠神社や龍神宮の他に、【猿田彦之宮】【天照皇大神宮】【薬師宮】【牛頭天王之宮】があった
・ 石碑は【忠臣碑】【二十三夜・庚申塚】
【五輪塔・板碑】
・ 御拝殿の裏手に案内板がある
・ それの通りに行くと裏手の林の中を進んでいく
・ 上へ上へと登っていく
・ リンゴ畑(?)の一角にある
・ 板碑自体はカギがかかっており拝むことは出来ない
・ 板碑群と見晴らしは良い
・ ただ参道は整備されている箇所もあるが、普通に急斜面なため注意が必要
御朱印について
・ あり
・ 神主さんが留守の場合、境内にある建物横に掲示された電話番号に電話を掛けると対応してくださる
まとめ・感想
行こう行こうと思いながらなかなか足が運びづらい場所にあった此方の神社。ついに訪問できた。
閑静な住宅街を抜けていくと奥まった場所に鎮座。駐車場がわからなかったが、一の鳥居近くに案内板がありその通りに行くと良いだろう。
駐車場の裏手に『乳井茶臼舘』の説明版。展望台的な場所へと案内している様子。
登ってみると意外な急斜面。幾つもの墓石を抜けていくと眺めが良い場所に。失礼ながら墓石をよく見ると、様々な宗派が混在。う~ん…集落ではよく見る光景。
暑い中を数分かけて登ると見晴らしがよい光景を見ることができる。晴れていると気持ちも良い。そこから見下ろすと、乳井神社らしき建物の屋根も見ることができる。
境内の様子の中でも触れたが二の鳥居が無い。いや…正確にはあったとのこと。補修中とのことで、貴重な両部鳥居の前後の柱だけを見ることができる。これはこれでレアな光景か?
五輪塔を見る為には御本殿の裏手の坂道を上る必要がある。こちらも登っていくと眺めが良い場所に。もう少し遅い季節に訪問すると、紅い林檎が実っているのを見ることができるかも。
雪害のための補修や予防を施している建造物を見ることもできる。しかも木造。文化財を護るためのモノだろうか?雪国でも中々お目に掛かれない。これを見るだけでも得した気分になれた。