弘前寺/生活の灯が消えた霊場
青森市にある『青森寺』も読みは『せいしんじ』だった。こちらの寺院も弘前市内にあるから『ひろさき』と読みたいが、正解は『こうぜんじ』とのこと。難しいね!
基本情報
寺院名 : 弘前寺
宗派 : 真言宗智山派
山号 ; 成田山
正式名称 : 成田山 弘前寺
読み方 : なりたさん こうぜんじ
住所 : 青森県弘前市常盤坂3丁目4-1
御朱印 : あり
御本尊 : 不動明王
開山 : 荒木照定
開山年 : 昭和23年
その他 : 津軽弘法大師霊場第五番札所
歴史
千葉県成田市にある大本山新勝寺の末寺。
昭和23年開山。御本尊の不動明王像は御分霊。大僧正荒木照定猊下のもと開眼大法要を行う。
現在の場所は、津軽藩三代目藩主・津軽信義公が屋形を建て、茶飲み場所にしたところと言われている。
その眺めは素晴らしく「唐にもない眺め」とのこと。『唐無坂』『お茶山』とも呼ばれる有名な地。境内には信義公歌碑が建立されている。
年に一回行う初不動の御幣護摩・釜鳴りはその年の吉凶を占い、世界平和と万民和楽を願う行事。
御祭日・行事
・ 1月1日~3日 : 元朝、新年大護摩
・ 1月28日 : 初不動、午前11時より不動護摩厳修
・ 2月3日 : 節分会
・ 2月28日 : 初不動大護摩、釜鳴り、御幣護摩
・ 3月28日 : 午前11時より不動護摩厳修
・ 4月28日 : 午前11時より不動護摩厳修
・ 5月28日 : 午前11時より不動護摩厳修
・ 6月28日 : 午前11時より不動護摩厳修
・ 7月28日 : 夏大祭
・ 8月13~20日 : 佛前供養
・ 8月20日 : 盆灯篭流し
・ 8月28日 : 午前11時より不動護摩厳修
・ 旧暦9月8日 : 八大龍神祭
・ 9月28日 : 午前11時より不動護摩厳修
・ 10月28日 : 午前11時より不動護摩厳修
・ 11月28日 : 報恩感謝祭
御本尊について
【不動明王】
・ ふどうみょうおう
・ 人々の一切の煩悩と迷いを断ち、全ての人を救うお不動様
・ 基本的に1つの顔に2本の腕
・ 一つの顔に4本の腕がある場合もある
・ 『動かない守護者』という意味の不動明王
・ 日本においては『大日如来の死者的性質』を持っている
・ 左目を細め右目は見開き天地を睨み、左右の牙で上下の唇をかみしめる表情が一般的
・ 一切の煩悩を滅してくれる
・ 真言宗の御仏壇では、脇仏として祀られる
・ 修験道の御本尊
・ 憤怒の形相で表現されるが、恐ろしさは感じられない
・ 憤怒の形相は、優しさだけでは消滅することのない煩悩や罪悪に苦しむ人々を、その怒りの力で救済するため
・ 背中に火炎を背負っているのは、火を焚いて行われる護摩祈祷の本尊
・ 護摩祈祷を頻繁に行う真言宗や天台宗では特に篤く信仰されている
・ 五大明王の一つ
・ 日本に不動明王を伝えたのは弘法大師空海
《梵名》※古代インドで用いられたサンスクリット語による名称
・ アチャラナータ
・ アチャラ→動かない。不動であること
・ ナータ→守護者
・ インドでは動かないものは【山】
・ 不動明王は【山の守護者】として信仰
《御利益》
・ 現世利益 :生きている間に得られる良いことを意味する
・ 煩悩退散 :煩悩は人の心を悪の路へと誘う。煩悩を断ち切ることで、悪しき心を燃やし尽くしてくれる
・ 厄除 : あらゆる邪悪なものを打ち砕くことができる
・ 学業成就 : 学力の向上、仕事のスキルアップを願う時に祈願する
・ 身上安全 : 自身の身の安全を祈願する
・ 立身出世 : 仕事で成果を出したとき、キャリアアップを成し遂げたいとき
・ 商売繁盛 : 商売に対しても御利益が多い
・ 修行者守護: 仏道を修行する者を常に守護し、障害となるものを滅ぼす
・ 健康祈願 : 健康・病気治癒に効果がある
・ 戦勝 : 戦国武将の中には、不動明王に祈願し勝利をおさめたものがいたとのこと
・ 国家安泰 : 空海は鎮護国家の祈願のために不動明王を礼拝し護摩供養をした。以降国家安泰の祈願のために不動明王が礼拝されている
《真言》
・ ノウマク・サンマンダバザラダン・カン
真言宗について
・ 宗祖は弘法大師空海
・ 生まれは香川県善通寺市
・ 真言密教の宗派
・ 本山は『金剛峯寺』や『教王護国寺』など
・ 修行によって大日如来と一体化して仏になることを目的としている
・ 所謂【即身成仏】
・ 真言→仏の真実の言葉
・ 『すべては大日如来から生じた』という考え
《焼香の作法について》
・ 宗派によって回数が違う
・ 真言宗は焼香は【3回】
・ 線香の本数も【3本】
・ 由縁は『三宝に供養する。三密修行に精進する』
真言宗智山派について
・ 総本山は京都にある『智積院(ちしゃくいん)』
・ 御本尊は大日如来をはじめとした『曼荼羅諸尊』
・ 宗祖は弘法大師
・ 中興の祖は『興教大師・覚鑁』
・ 覚鑁上人は弘法大師の教えを再興し、額との要請を行う
・ 『新義』と呼ばれる真言宗の教学を確立
・ 教学の建さんや修行を行い、他州の僧侶や一般の学徒にも開放された『学問寺』としての性格を持つのが智積院
・ 明治時代に入ると新仏分離政策により土地は没収。明治年間には金堂が焼失
・ 智積院の末寺は全国に3000あるとのこと
・ 有名な大本山に『高尾山薬王院』
境内の様子
【山号石】
・ 境内入り口にあり
・ 特にひねりは無いが『成田山』
・ 見やすく読みやすい字体
・ 道路から奥にありみえづからったが…
【参道】
・ 無人の霊場だがしっかりと整備されている
・ コンクリート敷の参道
【狛犬】
髪・眉 : 前髪カールしており眉は見えない。髪は毛先がカールしてライオンの様に顔の周りに張り付く。それほど長くはない
口・歯 : 厚めの唇がわかる。長い牙が上下に2本ずつの合計4本。他の歯は四角く歯並びは良い
髯 : 顎髭が生えている。髪同様に毛先はカールしている。顔の横へと左右に流れて生えている
耳 : 伏せ耳だが、横へとのびている。青森ではよく見る
目・鼻 : 目は楕円形で、白目と黒目がしっかりとわかる。顔の中心にある大きな獅子鼻。鼻同様に穴も大きい
毛・尾 : 尻尾は真ん中がピンと立つ立ち尾。周りは毛先がカールしている。波を思わせるような毛並み。身体に張り付き流れているように見える
手足 : がっちりとした手足。力強い
姿勢 : 背筋を伸ばしたお座り。市政が良い
・ 青森ではよく見かける見た目の狛犬
・ 唖形が足の下に毬
・ 吽形は足の下に子狛犬
・ 安心感のある狛犬。秋田や岩手の狛犬ともまた違う。地域によって違うのだろう
【摂社・末社】
・ 八大龍神
・ 代わった造りの屋根をしているが、雪が落ちやすい構造
・ 屋根・建物の材質は御本堂と同じ
・ 内部はしっかりと整理されている
・ 崩壊している小堂があった
【石像】
・ 不動明王像・弘法大師像・水子地蔵が並んで鎮座されている
・ 憤怒の表情だが、優しいような不思議な感じ
・ 傷ついたりした石像は無い
・ こちらの整備もしっかりとなされている雰囲気
・ こちらの弘法大師は子供を抱きかかえ、優しい笑みを浮かべている
・ 不動明王とはまた違ったやさしさが感じられる
【御社殿・御拝殿】
階層 : 平屋
材質 : 木造・漆喰・トタン
建築様式 : 流造
屋根の特徴: 平入
屋根の材質: 鉄板敷
・ 緑色の変色と錆色の屋根。汚いやみすぼらしい感じはしなく、徐々に変化しているようにも感じられる
・ 無人ではあるが外観は綺麗にされている
・ 無人のためやはりどこか寂しい感じがする
・ 御本堂のドアはカギがかかり、中も暗く様子をうかがえないが、摂社の八大龍神様の方は内部が見えた。整理されているため御本堂の内部も綺麗なのだろう
・ 建物は簡素な造り。雪国には珍しく二重玄関になっていない
御朱印について
・ あり
・ 境内は無人のため、御朱印は第7番札所である【覚応院】さんでいただける
まとめ・感想
不動寺に向かう途中にたまたま見つけて寄り道を。調べると弘法大師霊場とのこと。
境内に住職さんのご自宅があるが(訪問時は)無人のよう。外観や停めてある車の車内が荒れていることから、結構な時間無人のように感じられる。境内の小堂が崩壊されている箇所もあった。無人なため修繕なども難しいのだろう。それでも参道や霊場の御堂が荒れていることはなく、むしろ整備が行き届いているように見えた。他の無人の霊場などに比べて綺麗だと思う。
御堂の入り口が張り紙をして御朱印の案内をしていてくれているのはありがたい。覚応院かぁ…。参拝後に向かうことに。弘前は微妙に遠いからなぁ。
御本尊はよく霊場の建物内に安置されていることが多いが、今回の弘前寺さんは境内の一角に鎮座されている。憤怒の表情だが、怖さは感じられない。力強さから旅の安全と健康の祈願をお願いすることに。